お正月に彼が実家で挨拶してます

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年が明けた。わたしが結婚する年になった。 一月三日、夫になる将吾さんが代々木上原の大山町にあるわたしの実家に挨拶にやってきた。 「……すんげぇ、家だな」 将吾さんがうちの家を見て、目を見張った。 母屋の日本家屋は、江戸時代の大名屋敷の一部を移築したもので、よく映画やドラマのロケに使わせてほしいと頼まれるくらい、荘厳な(たたず)まいだ。 門から進んでいくと、曽祖父が道楽を尽くした広大な日本庭園が広がっている。 確かに、向こうから暴れん坊将軍が馬でパカパカやってきても、違和感ないかも。 「なに言ってんの。将吾さんちだって『迎賓館』じゃん」 彼の実家は、明治時代の華族が国内外の貴人たちをもてなすために所有していた洋館を譲り受けたものだった。 「でも、母屋はおじいさまとおばあさまが住んでる家で、わたしが両親や弟と一緒に住んでるのはもっともっと庶民的な家だからね」 一応、言っといた。はっきり言って、わたしでも母屋に入るのはちょっと緊張するのである。 そうこうしているうちに、玄関が見えてきた。 裕太が、ちらちらと、こちらを見ながら待っている。案内役を仰せつかったのだろう。
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