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大きな掘り炬燵を囲んで、将吾さんとうちの家族との会食は和やかに進んだ。
わが国を代表する一流の老舗ホテルに入っている日本料理のお店から来てもらって、うちのキッチンを使って調理された会席料理に舌鼓を打つ。
呑兵衛のおじいさまが勧める熱燗を、将吾さんは断ることなくお湯のようにぐいぐい呑んでいる。
裕太が「大丈夫か?この人」って目で見ているが、島村さんによると相当強いらしい。
たぶん、日本人の遺伝子よりもアルコールを分解する酵素に長けている西洋人の遺伝子を持ち合わせているからだろう。
その豪快な呑みっぷりだけで、おじいさまはほぼ陥落状態だったが……
「……君は若いのに、なかなか見る目があるな。
グランド・セイコーに目をつけるとは」
将吾さんの左手首の時計に目を細めた。
齢八十を過ぎたおじいさまの朝比奈 榮壱は、名目上はあさひJPNフィナンシャルグループの会長であるが、今はほとんど出社していない。
だが、グループ内はもちろん経済界での威厳と影響力は健在だ。
「彩乃さんに婚約指輪のお返しとしていただきました」
わたしはおじいさまに向かって、まるで芸能人のように左手の甲を向けて指輪を見せた。
ピヴォワンヌがきらっと輝いた。
「おじいちゃま、時計はパパに訊いて選んだのよ」
おじいさまは、そうか、そうか、とさらに目を細めた。
「あーちゃん、指輪を見せて」
おばあさまの志乃がそう言うので、わたしはそばに駆け寄って見せた。
「綺麗だねぇ……あーちゃん、よかったねぇ」
おばあさまはわたしの手を摩りながら、少し涙ぐんでいた。
「おばあちゃま、ありがとう。
彩乃ね、この指輪とっても気に入ってるの。
お揃いのイヤリングももらったんだよ」
母屋と離れで暮らしてはいたけれど、初めての内孫として、本当にかわいがられて育てられた。
この大切な二人に、感謝以外の言葉はない。
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