破談の危機なのに結納やってます

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お互いの両親たちは、大仰な日本古来の「儀式」を終えて肩の力が抜けたのか、うれしそうに会話を弾ませていた。 打ち解けて話す彼らとは対照的に、将吾さんとわたしの表情が堅く見えても、それは緊張のせいだと思ったようだった。 わたしは将吾さんの「最後通牒」を今か今かと待ち受ける身なので、はっきり言ってどんなに美味(おい)しい料理であろうと、まったく食欲はなかった。 でも、これが将吾さんとの「最後の晩餐」(厳密に言うとランチだが)になるのだ。 初めて会ったお見合いのときにはほとんど食事に手をつけられなかったけれど、たとえとことん嫌われた末に婚約破棄されるのだとしても、実は美味しいそうに食べる女だったんだ、と思ってもらいたかった。わたしは一生懸命食べた。 そして、表面上は和やかに食事を終え、めいめいコーヒーか紅茶を飲んでいるときだった。 「……折り入って、彩乃さんとのことで、お話があります」 不意に、将吾さんが切り出した。 ……とうとう、来た。 わたしは、覚悟を決めた。
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