破談の危機なのに結納やってます

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将吾さんが口を開いた。 「……本日、正式に婚約が決まって、いきなりだとは思うのですが」 わたしは俯いた。 左手の薬指にはピヴォワンヌがレストラン内のオレンジっぽい照明に照らされてキラキラと輝いている。このリングも今日限り。 将吾さんにお返ししなければならない。 「時期尚早であることは、重々承知の上でのお願いです」 ……そりゃ、そうよ。 たった今、正式に婚約したってのに、もう破棄するんですもの。 「……彩乃さんと、うちの家で同居させていただけませんか」 ……はぁ!? 口をあんぐり開ける、なんてそんなのマンガかアニメの世界でしかないことだと思っていた。 が……今のわたしの顔はまさにその顔なのではないか?
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