破談の危機なのに結納やってます

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「……いやぁ、こんなに早く『娘』を我が家に迎え入れられるなんて、うれしいなぁ」 お義父(とう)さまが将吾さんの面影を彷彿とさせる笑顔を満開にさせた。 「彩乃さん、わたしもとってもうれしいわ! 先刻(さっき)いただいたCD、一緒に聴きましょうね」 お義母(かあ)さまが魅惑的な笑顔でウィンクする。 「……本当に不躾な娘で恥ずかしい限りですが、彩乃をご指導してやってください」 うちの母親が深々と頭を下げる。 「まぁまぁ、お母さん、顔をお上げください。 うちは家内が外国育ちですし、そんな堅苦しく考えないでください」 「そうですわ。わたしは仕事ばかりで、家のことなどハウスキーパーたちに任せっきりですし」 将吾さんのご両親が恐縮する。 ……なんだか、とんでもないことになってしまった。 恐る恐る将吾さんの方を見ると、目が合った。 彼はしてやったり、のドヤ顔をしていた。 だけど……なぜか、妙にほっとしたような、穏やかな表情にも見えた。
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