とりあえず、身ひとつで参ります

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わたしは部屋の中に入ると、猫脚のローテーブルにドゥパリを置き、白いカウチソファに気の抜けたようにぽすんと座って、はぁーっと息を吐いた。 明日から会社だし、本当はすぐにでも、衣類の整理をしなければならない。 なのに、今まで気楽に実家で過ごしていたのが、もう懐かしかった。 わたしは与えられた部屋を見渡してみた。 ……今日からここが、わたしの部屋。 装飾された扉に丸みを帯びた白木の家具も、小花の模様に白いレースをあしらったファブリックも、すべて……憎らしいくらいわたし好みのフレンチカントリー調に整えられている。 わたしは、今度は、ふーっと息を吐いた。 そして、実家から届いた衣類をまだ木の匂いのする真新しいクローゼットに納めるために、カウチソファから立ち上がった。
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