彼に夜這いをかけられてます

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わたしは固まった。 お風呂に入った直後でどすっぴんである。 髪はライオンの(たてがみ)のように広がっている。 おまけに、わたしは寝る時はノーブラ派なので、フリース地で透けることはないとはいえ、やはり胸元が落ち着かない。 しかも、ユニクロだったっ! 「な…なんか用?」 わたしの声はテンパって上擦っていた。 「用がないと婚約者の部屋には来ちゃいけないのか?」 部屋に入った将吾さんが近づいてくる。 彼もお風呂に入ったのであろう、スウェットの上下というラフさだった。 わたしが将吾さんに「提案」して以来、ずっと「初心に返って」よそよそしい関係になっていたので、妙に気まずい。 わたしは思わず、後ずさりする。 「逃げるな……彩乃」 将吾さんの手が伸びてきた。 肩をつかまれ、ぐいっ、と引き寄せられる。 次の瞬間にはもう……将吾さんの腕の中にいた。
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