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「……朝比奈彩乃と申します。
慣れないうちはなにかとご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いいたします」
わたしは深々とお辞儀をして顔を上げた。
その瞬間。
……あぁ、ややこしそうな人がいる。
心の中でため息を吐いた。
今日は十二月一日。
出向先の南青山にあるTOMITAホールディングスへの初出社の日だ。
今わたしは、個人付きではなく秘書室長の指示で動くグループ秘書の二人に挨拶していた。そのうちの片方の態度が、すこぶる挑発的だったのだ。
わたしと同じくらいだから、一七〇センチ近くはある上背に、制服を着ていてもわかるスタイルの良さ。スカートの丈が絶妙で、もともと長い脚がさらに長く見えた。
ツヤッツヤの腰まであるロングの黒髪には「女の命」を賭けていそうだ。
和風な瓜実顔の彼女は、文句なく美人だ。
完璧な形の眉と、くっきり引かれたボルドーのルージュに、意思の強さが現れている。
そして、その目は初対面にもかかわらず「ここで会ったが百年目、親の仇を討つぞっ」とばかりに、わたしの方を一直線に射抜いていた。
……この人はもしかしたら、
わたしの婚約者のオンナなのかもしれない。
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