副社長の専属秘書の仕事やってます

2/12
前へ
/541ページ
次へ
「……ねぇ、七海、この前の日曜日、お見合いだったんでしょ?」 自作のだし巻き玉子を食べながら、誠子さんが尋ねた。 彼女はやる!と言ったら「やる女」だった。 朝寝坊したときは冷凍食品に頼るみたいだが、今までまったくといっていいほど料理をしたことがないらしいのに、がんばって毎日お弁当をつくって持ってきていた。 仕事の方もずいぶん慣れてきて、同じグループ秘書の七海ちゃんの手を煩わせることもなくなってきた。 すっかりナチュラルメイクになり、雰囲気もぐっと柔らかくなったので、他部署の人たちからも話しかけられるようになった。 「相手の方は、背が高くてイケメンで、そして、あたしとは違って、頭のすっごく良さそうな人でした」 七海ちゃんがハーブ風味のチキンサラダを食べながら答える。彼女もまた「女子力UP!」と称して、お弁当をつくってきている。 お見合いの相手は、彼女の父親の部下で、金融庁に勤めるT大卒のキャリア官僚だった。 「そんな人だったらいくらでも『自力』で結婚相手が見つかるじゃないですか? だから、あたし、思い切って訊いたんです」 わたしはサーモスのスープジャーに入れたミネストローネを食していた。 将吾さんの実家で住むようになってから、夕飯などをつくる機会がなくなったので、せめてお弁当くらいは、と思って朝食前にキッチンを借りてつくっていた。 「『あたしとお見合いするのは、出世のためですか?』って。『もしそうなら、あたしなんかより、同じ官僚の姉の方がいいですよ?』って」 七海ちゃんはそう言って、サーモスとアフタヌーンティーがコラボしたケータイマグのお茶を飲んだ。 「……で、相手はなんて答えたの?」 誠子さんが身を乗り出す。
/541ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8179人が本棚に入れています
本棚に追加