副社長の専属秘書の仕事やってます

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゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚ 七海ちゃんがコーヒーを淹れてくれて、誓子さんの話を聞くスタンバイはOKだ。 もう、今日は(ほんとはダメだけど)仕事どころではない。 「……で、どうして『誓子さん』だったのに『誠子さん』なんですか?」 七海ちゃんが身を乗り出す。 「何回もお見合いしたけど、全然決まらなくて。母親が『名前が悪いんじゃないか』って言い出して、姓名判断でみてもらったら十六画がいいってことで今の名前をつけてもらったの。 それに『誓う』って漢字なのになかなか『ちかこ』って読んでもらえなかったし、変えてみてもいいかな、って思って」 誓子さんはふうーっとため息をついた。 「でも……結局、なぁーんにも変わらなかったわ」 「ケンちゃ……葛城さんとは知り合いですか?」 わたしはコーヒーにミルクを入れながら尋ねた。 「謙二さんは、初めてお見合いしたときの相手だったの。まだ、わたしが二十四、五歳だったわ」 ……へぇ、そうだったんだ。 「それで、誠子さ……じゃなくて、誓子さんから断ったんですか?もったいなーいっ! ステーショナリーネットの若社長ってイケメンで、テレビにも出てる有名人じゃないですかぁ」 七海ちゃんが無邪気に身悶えた。 この子にはこんなふうにしても、なぜかまったくイヤミにならない羨むべき才能がある。 ステーショナリーネットはここ五年ほどで急成長していて、マスコミでも話題になる会社だった。 「わたしが断ったんじゃなくて、向こうに断られたのっ」 ……ケンちゃん、大橋コーポレーションの社長令嬢を袖にするって、勇気あるなぁ。 「初めてのお見合いがそんなハイスペックな人だったでしょ?それからのお見合いでは、なんだか見劣りしちゃって」 家柄も良く和風美人でモデル並みのスタイルの彼女が、ここまでお見合いがうまくいかないっておかしいもんなぁ。 ……つまり、ケンちゃんのことが今でも引っかかってるってこと?
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