彼のお部屋で疑心暗鬼になってます

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「……あ、葛城社長。今日はわざわざ我が社までご足労いただきありがとうございました。 ……えっ、彩乃のスマホの連絡先ですか?」 将吾さんが、怪訝な顔でわたしの顔を見る。 「それなら、今、代わりますよ。 ……えぇ、そうです。彼女とはもう同棲してますから」 わたしがソファから立ち上がってベッドまで行くと、将吾さんが無言でわたしにケータイをよこす。 ……「同棲」じゃなくて「同居」っ! ケータイを受け取ったわたしは、隣の自分の部屋で話そうと思ったのに、なぜか彼に腕を引っ張られてベッドに引きずり込まれる。 ベッドに座って、背後からすっぽり包まれるような態勢になる。彼の膝の上にあったはずのノートPCはいつの間にか、ブルーライトカットの眼鏡とともにサイドテーブルの上だ。 ちょっともがいてみたけれど、細身に見えてがっちりした骨格の将吾さんにがっちりホールドされていて、脱出できない。 仕方なくそのままの態勢で、ケンちゃんと電話で話すしかない。 「……もしもし、ケンちゃん? どうしたのよ?……なんかあったの?」
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