イケメン秘書と婚約指輪を選びます

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「……そして、こちらがマリッジリングでございます」 ついでに結婚指輪も決めておけ、ってことね。 結婚指輪は、六本あった。 シンプルな「エピュール」 エピュールが二重になったような「ゴドロン」 ダイヤの形をモチーフにした「ファセット」 パリのヴァンドーム広場の石畳をモチーフにした「クル・ド・パリ」 ホワイトゴールドとブラックPVD加工の二重になった「キャトル・ブラック」 ホワイトゴールドとハーフエタニティの二重になった「キャトル・ラディアント」 ブシュロンの結婚指輪はファッションリングみたいな斬新なデザインだな、と思った。 島村さんがタブレットで全体の写真を撮る。 「……副社……」 と言いかけて、島村さんから圧を感じ、 「しょ…将吾さんなら『キャトル・ブラック』がいいんじゃないですか?あんまり結婚指輪っぽくなくて」 男性の方が似合いそうなこのリングは、やんちゃでセクシーな感じがしたので、将吾さんのイメージにぴったりだ。 たぶん、このリングをしたら今よりもっとモテるかもしれない。彼のステイタスとルックスなら、既婚であろうと頓着しない女性たちが寄って来るだろう。 わたしは「キャトル・ラディアント」の方を指につけてみた。 「最近は、同じデザインではないマリッジリングをお求めになる方が増えているんですよ」 島村さんがタブレットでわたしの手を撮る。 「男性の方を試しにつけてごらんになりますか? その方がイメージしやすいと思いますが」 店員さんが島村さんに尋ねた。 「……あ、ちょっと待ってください」 島村さんは、やはり(せわ)しく画面にタップし続けている。 ……忙しいのだ。申し訳なさでいたたまれなくなる。 「……すいません、やはり遠慮しておきます」 島村さんがほんの一瞬、苦笑したように見えた。
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