親友に政略結婚を報告します

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翌日の土曜日のお昼、わたしは幼稚園から女子大までずーっと一緒だった親友の石井(いしい) 華絵(かえ)と鉄板焼きのお店でランチするために会った。 披露宴で、お互いの会社への忠誠心のバロメーターの板挟みになり、キリ◯ビールを出すか、アサ◯ビールを出すかで、破談寸前まで揉めに揉めたのは彼女である。 今では、三歳の男の子のママだ。 「今日は大翔(ひろと)くんはどうしてるの?」 わたしは彼女の息子のことを尋ねた。 彼女の夫が、休日の昼ごはんを不自由しようがどうしようが知ったことではない。 「今日は保育園じゃなく、うちの母に預けてる。 もう、大翔、動き回って目が離せないから、すっごくイヤがられるんだけどねー。 ダンナは接待ゴルフよ。暖冬だから、十二月でも誘いがあるのよ。せめて、休みの日くらいイクメンになれっつーのっ」 華絵がスパークリングワインを片手に、前菜の三種盛りの中のスモークサーモンのマリネを食べながら、グチとともにため息を吐く。 彼女は学生時代からつき合ってた彼と、社会人になってからわりとすぐに結婚したが、寿退社せずにとっとと子どもを産んだあとは、むしろバリバリ仕事をやっている。 今日はナチュラルメイクの休日仕様だが、実はベースを死ぬほどきっちり作り込んでいるのをわたしは知っている。華絵は学生の頃からメイクが上手だった。 「ジジババからすると、孫が来てくれるのはうれしいんじゃないの?」 三種の盛り合わせの中の生ハムメロンを食べていたわたしは目を丸くする。ちなみにもう一品は、冷酒グラスに入った、そら豆の黄緑色と豆乳の白が二層になったムースだ。 「最近のジジババは、そうじゃないんだよー。 うちのママなんて、盆暮れに大貴(ひろき)と実家に泊まったとき『大翔の世話は二日が限度!早く帰って!!』って言うもん」 華絵が苦笑する。大貴とはダンナの名前だ。 話し出すと、女子大生だったあの頃の口調に戻る。 「……って、今日はこんなグチを吐き出すために来たんじゃないの!」 華絵がシーザーサラダのレタスをフォークで、ぶすっ、と刺した。 「……彩乃、突然『政略結婚』するってどういうこと!?」
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