親友に政略結婚を報告します

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わたしは、今までの経緯……お見合いに始まって、彼の会社で秘書をするようになり、昨日婚約指輪を買いに行ったことを話した。 わたしたちの前には、牛フィレ肉のステーキとつけ合わせの焼き野菜が乗った石のプレートが置かれている。数種類の岩塩で食べさせる趣向だ。 「ちょっと、彩乃……あんた、もしかして、一日で婚約指輪(エンゲージリング)決めちゃったの?」 華絵の眉間に一本シワが寄る。 「そんで、ブシュロン見ただけで決めちゃったって?」 華絵の眉間のシワが二本になる。 「しかも、婚約相手の男が来ないで、秘書と選んだだぁ!?」 華絵の眉間のシワが三本に増えた。 「うん、でも、すっごく気に入ったんだよ。 今はサイズ直ししてるから、今度見せるね……」 華絵の眉間のシワは無数に増殖した。 「彩乃っ!そんな男と結婚すんのっ、速攻でやめなっ!!」 菩薩のような穏やかな美しい顔が、今や不動明王のような憤怒の表情になっている。 鉄板の前のカウンター席で、豪快にフランベされるお肉を見たいなと思っていたが、積もる話があるので、半個室のこのテーブル席にしてよかった。わたしは赤のグラスワインを呑みながら、しみじみ思った。
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