聖なる夜に初デートします

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今日は十二月二十四日、クリスマスイブの日だ。 ブシュロンからサイズのお直しがあがり、婚約指輪を渡せるとの連絡があった。 イブには間に合ったけれど、わたしたちには関係ない。将吾さんは今日もお仕事だ。 わたしは下っ端の秘書だから詳しくは知らされていないが、アメリカ支社が抱えるトラブルはなんとか彼らのクリスマス休暇までにケリをつけようとがんばっているらしい。 といっても、彼にとってのクリスマスのメインは、十二月二十五日みたいだが…… 彼はスウェーデン国籍の生粋のクリスチャンの母親を持ち、大学に入るまでのほとんどをアメリカなどの海外で過ごしていた。 そして、KO大に内部進学したが、ニューヨーク学院から日本に戻ってきての入学である。 (ちなみに、それを知った同じ内部進学の裕太が、なぜか勝ち誇った顔をしたが、卒業後ケンブリッジで経営学修士(M B A)を取得してるよと言うと、急に黙り込んだ。) だから、クリスマスの前日を最高潮にお祝いしている日本の「信者」たちの気が知れない、と言って憚らない。 今日はうちの両親もクリスマスディナーでお出かけだ。ちなみに弟の裕太は案の定、昨日出かけて行ったきり、帰ってこなかった。 予定がないのであれば一緒に、と両親に誘われたが、せっかくの「デート」を邪魔する気はない。 ……そうだ。指輪を取りに行こう。 なんだか、京都へ行くみたいだが、都内の銀座である。 一応、将吾さんにもLINEで伝えておこう。 【お仕事お疲れさまです。ブシュロンから連絡があったので、これから取りに行きます】 ……業務連絡みたいだなぁ。 しかも、彼とLINEのIDを交換して以来、初めて送るんだけど。 毎日、会社で顔を合わせているから、別にLINEで連絡を取り合う必要もなかった。 「とりあえず……送信、っと」 わたしはスマホの画面をタップした。
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