Prologue

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そのお見合いのお相手とは……昨日になってあわてて見た「釣書」によると。 富多(とみた) 将吾(しょうご)といって…… KO大の経済学部を卒業後、父親が社長のTOMITA ホールディングスという自動車会社を主体としていろんな分野の会社を傘下に収める富多グループを統括する持株会社に就職した。 その後、会社から命じられイギリスのケンブリッジ大学のビジネススクールで経営学修士(M B A)を取得。 そして、この十一月で三十歳になったばかりだというのに、副社長に就任したそうだ。 「富多」って……富が多い、ってことじゃん。 いかにも、金持ちな名前だなぁ。 「名は体を表す」ってこと? 外見は……実は一目見たときから気づいてはいたのだが……かなりのイケメンである。 少し癖のありそうなダークブラウンの髪。 少年っぽさが残った、丸顔気味の輪郭。 目尻が上がったアーモンドのような二重の目に、すーっと通った鼻筋。 やわらかそうな、ちょっと厚めのくちびる。 色素の薄いカフェ・オ・レ色の大きな瞳で。 彼は先刻(さっき)からずっと、わたしにガンを飛ばし続けている。 ……きっと、わたしの印象、最悪に違いない。 9514b9ab-894d-43d1-9f5c-e18a9500961f
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