魔力操作

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魔力操作

 無属性は百万人に一人位の割合でしか居ないらしいので、全属性と言ったのは強ち間違いでは無い。そもそも人が無属性になる事は、滅多にないからなのだが。大概は、人と多種族のハーフで産まれた子がなるとか。 「では先ず基礎練習その一、魔力操作から始めようか。やり方はこの魔道具に自分の魔力を注いで、棒を上下左右に動かす事。これが出来ないと、召喚魔法に必要な魔法陣を描く事が出来ないよ」  各グループに渡された魔道具は、十字に彫られた溝に棒がハマっているだけの単純な物だった。棒の頭部に魔力を注ぐ為の、丸い宝石みたいな物が取り付けられている。何となくマニュアル車に有る、シフトチェンジに見えなくも無い。 「手本を見せるから、よく見ておく様に。毎日少しずつ難易度も上げて行くから、その日の内になるべく出来る様、居残りも考慮してあるからね」  そう言ってから先生が各グループを周り、魔道具に魔力を注いで棒を動かし始める。棒がまるで生きているかの様に滑らかに動く。魔力を電波に例えるなら、手元のリモコンから棒の頭部にあるアンテナに、電波を送って操作している様なものか。 「それでは一人ずつ交代でやる様に、持ち時間は一分。出来ても出来なくても交代して、他人がしている様子をしっかり見て自分に何が足りて無いのか、どうすればより良く動かせるかを考える事」  生徒が魔力を魔道具に注いで動かそうとするが、先生と違ってぎこちない。時には全く動かせない子も居て、一生懸命魔力を注いでいるのに棒が反応せず涙ぐむ様子は可哀想だけれど、自分も同じ事にならないか心配で静観していた。  他のグループにはトムレンとニャミスが居るので、其方はアドバイスを貰いながら棒を動かしている。このグループは初心者だけの様で、誰もアドバイスをしていない。必死に他人のやる様子を見て、自分との違いを感じようとしている。 「俺の番か、せめて動いてくれよ・・・」  自分の番になったので、魔力を注いで動くように念じる。頭の中にシフトチェンジをイメージして上下に動かしてみると、その通りに棒が動き出した。やった! 魔力操作は問題無さそうだ。  今度は左右に動くか試す、しっかりとイメージ通りに行って嬉しくなるが、俺の持ち時間があっと言う間に終わる。たった一分で先生と比べたら、動きも何もかも遅くてぎこちなかったが、ちゃんと動かせた事が何より大きい。  数十分の間、魔道具に魔力を注いで棒が動くかどうかで一喜一憂する生徒達。
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