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お互いのファーストキスは 息を止め、唇を合わせただけの 可愛いもの すぐに離れると 「お前、顔真っ赤」 「あんたは真っ黒焦げ」 同時に吹き出した 「もう二十歳なんだしキスだけじゃ許さねーぞ?」 ニタリと笑う京介 「やだ京介、なに言うのよ 無理無理無理無理! 今ので私、いっぱいいっぱいなんだから」 真っ赤な顔のまま文句を言う私は 京介の腕の中に閉じ込められた 「茜の初めては俺がもらう 俺の初めては茜にやる」 聞こえた低い声に身体が震える 「なに震えてんだよ俺じゃ嫌か?」 「嫌じゃないよ・・・でも怖い」 「怖くないさ、俺がいるだろ?」 お互いの気持ちを確かめ合うみたいに 何度も何度もキスをした 1ミクロンも好きじゃないなんて言っておきながら ホントは私もずっと京介が好きだったんじゃないかって考えていた 余りに近くに居たから 改めて考えることも無かっただけで 相手のことを思いやり 楽しいことを楽しいと一緒に笑って 悲しい時は半分にして慰め合ってきた 誰も入り込めない二人の歴史 これからは京介の球を受けてあげられないけど ずっと側に居て・・・ 飽きるほど側にいて 応援してあげる ソフトボールで繋がった 二人の絆は これからも守りたい 茜色の糸 「茜、おい茜?」 肩を揺さぶられ京介を見る 「お前。俺の腕の中で寝てただろ? 油断しすぎだ!」 「ん?」 気づかないまま張り詰めていた気持ちが切れたのか 京介の腕の中で寝落ちしていたようだ 「緊張の糸が切れたのかな」 「良いよ、俺の此処が茜の安心する場所なら いつでも空けといてやるから」 胸をトンと叩いた 「茜。明日一緒に帰ろうぜ」 そう言うと思った 「まだこっちに居たいの」 戻れば現実と向き合うことになるし ソフト部のみんなとも顔を合わせる できれば後期がスタートするギリギリまでこっちに居て “練習がんばって”と応援できるようになってから戻りたい 「もう少しだけ。ねっ」 誤魔化すために可愛く言ってみる 「茜、メンバーと顔合わせるの辛いのか? 向こうも向こうで辛いんだから 渋ってないでいつも通り接するのが一番! それに・・・」 「それに?」 「茜が居ないアパートは寂しいんだ」 ポツリと出た言葉にキュンとして 京介の胸に抱きついた 「京介」 「ん?」 「京介」 「なんだよ」 考えなくてもちゃんと私の気持ちは決まっていた 「あたしも京介のこと好きだよ」 fin
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