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玄関を出ようとすると 母が追いかけてきて 「やだ~手まで繋いじゃって~ 京ちゃんどこにデート?」 冷やかすから居た堪れない 「おばさん!ひとまず結婚式挙げてきます」 そう言って敬礼する京介に母もつられて敬礼 「おめでとう。お幸せに~」 「信じられない馬鹿ばっかり」 茶化す母に舌を出して外へと出た 蝉の声がまだうるさくて 18時過ぎはまだ明るい いや・・・暑い 「新しく出来たショッピングセンター行ってみるか?」 自転車に乗り 京介の腰に手を回した 「お前ギュッと絞めんなよ 身体が反応するだろ?」 ・・・・・・ん? 「・・・・・・っ!」 思考回路が繋がった 回した手を外し 自転車から降りる 「きょ、京介。何てこと言うのよ 馬鹿じゃないの?もう歩いていくから」 声が頭頂部から出ているみたいに上擦る 「なんだよ冗談に決まってるだろ? 早く乗れよ」 「次、あんなこと言ったら許さないから」 ひと睨みして後ろに乗った 両手が触れるお腹は 固い腹筋でデコボコしているし 180センチの身長にTシャツから伸びた筋肉質の腕もカッコいい 「ねぇ、京介さ。よく告られてたじゃん? 差し入れとかどうしてたの?」 思い切って聞いてみる 「全部断ってたよ? ずっと『好きな子いるから』って 差し入れはメンバー達に渡してた ほら、捨てると悪いだろ?」 「好きな子って、私?」 「他に誰がいるんだよ」 「そっか」 嬉しいと思った…正直な気持ち 「茜は俺のこと好きだと思ったことないのか?」 「1ミクロンも無いね」 「単位ちっちゃすぎてわかんねー」 お喋りしてる間に到着 汗をかいた京介にハンドタオルを渡す 「これ茜のニオイがする」 顔に乗せてクンクン鼻をならすから 「なによキモイよ」 タオルを取り上げた 「早く中に入ろーぜ! 冷房の中で汗を止めたい」 手を引かれ中に入ると 中央にある噴水横に腰掛けた 「高校の時にオープンしていれば 待ち合わせはこの噴水だったよね」 なんでもない話し・・・ けれど同じ歴史を積み重ねてきた二人にしか分からない話しを 京介の汗が引くまで続けた 「茜。腹減ってねーか?俺ペコペコだ」 「何食べる?」 気を利かせて聞いてあげたのに ニッコリ笑って「茜」と 自信タップリに答えたから とりあえず無視すると 二階にあるフードコートへ振り返らず歩いた 「もう許してくれよ~茜ちゃ~ん」 反省ナシ・・ふざけてる 「京介ラーメン食べれば? ほら毎日作ってたじゃん」 フンと鼻で笑うと 「あれは、お前と一緒に食べたいから」 黙り込んでしまった 眉の下がった顔を見せられると 胸がザワつく 「ウソだよ!ありがとう」 顔を覗き込む 直ぐに浮上した京介は歯を見せて笑うと 「だろ~~俺に感謝しろよ?」 得意顔になった なんだかそれが悔しくて 「次からはラーメン要らないから作らないで」 冷たく言い放つとまたすぐ肩を落とし 「一緒に食べようよ」 京介は俯いたまま口を尖らせた 「この夏で茜様は料理の天才になったから 毎晩作ってあげよう」 得意気に肩を叩くとその手を引かれて抱きしめられた 「ちょっと、ここ地元!やめて」 振り解こうとするのに ビクとも動かない そればかりか 「俺は茜が大好きだ~」 大声を出すから周りの視線を釘付けにした 「・・・っ」 慌てて京介の手を引き ショッピングセンターの外へと出る 「ちょっと!やめてよ! もう恥ずかしいじゃん」 真剣に抗議したつもりなのに 「俺は恥ずかしくないよ茜のこと大好きだから」 また引き寄せられて腕の中にいた 「・・・・・・ハァ」 こいつには適わないと諦めたところで 脇を通り過ぎようとした親子連れが目に入った 「ママ見て~」 私達を指差し笑う子供と 見せないように目を塞ごうとする母親の手 「りょう君見ちゃだめだって」 ついでのように睨まれて小さく頭を下げた 「ほら馬鹿京介の所為で」 耳まで熱い 「お前・・顔、真っ赤だぞ」 「あんたは真っ黒焦げよ」
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