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「あっ、今のは三上とちょっとふざけてて、てっきり三上だと思って、三上が……」
「仲良いもんね。三上君と」
大学3回生 武田 幸子(たけだ さちこ)、潤が運命の人と勝手に思ってる相手だ。
「潤君、お久しぶり。あのね……今日時間あるかな?ちょっと…」
以心伝心か。驚いて声にならない潤。
「ダメかな」
「いい、いい、いい、いいよ。今すぐ出れる」
くすくす。幸子の笑い声が聞こえた。くすくすと小さな声で笑う幸子を見て、うさぎが笑うとこんな感じだろうなと……好きになったんだな。
今日告白するつもりでいたから身だしなみははバッチリだ。
すぐに部屋を出ようとして、ふと、足が止まった。
すると、下から
「じゅんーさっちゃんよぉ~」
近所中に響く大声でオカンが叫んでる。古い木の階段をギシギシゆわしながら、
潤は大慌てで降りてきた。
「焼き芋ね。今焼けたとこだよ。さっちゃん」
潤の両親は商店街で八百屋を営んでる。幸子はよく買いにきてくれて、両親とも顔見知りになっていた。
「オヤジ、いらないよぉ。今から出かけるから」
潤は店の奥から父親 田中 誠司(たなか せいじ)に声をかけた。
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