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コンビニ前の駐車場に、黒い超高級車が止まっていた。2台分の駐車スペースをとる大きさだ。
「初めて見たっす。日本に3台しかない車っすよ」
バンドマンは興奮気味に外に出ていた。
「へぇー、どれ」
後ろから潤が覗き込んだ。
そこへ幸子が、茶色のハーフブーツで雪をゆっくり踏みしめながらやって来た。
「さっちゃん、ごめん、ごめん。すぐ行くね」
バンドマンの肩をポンと軽く叩いて、
「行くわ。ありがとっ」
潤が バンドマンの前に出た時、超高級車の運転席が開いて、白髪の紳士が後部座席のドアを開けた。
幸子は少し伏し目がちに笑って、超高級車に乗り込んだ。
「ええええ、何で」
潤は慌てて超高級車に駆け寄って
「さっちゃん、どうしたの」
潤は、 お腹をグーで殴られたように体をくの字に曲げて、覗き込んだ。
「……潤君も……乗って」
蚊の鳴くような声がかすかに聞こえた。
「うっうるさいねん。さっちゃんの声が聞こえないだろ」
バンドマンが潤の後ろで
「中見たいっす。すげっ、ヤバイっすね。マジっすか」
はしゃぎまくっている。スマホを手にして
「写メいいっすか」
白髪の紳士に向かって聞いている。
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