運命の人

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「やっぱダメっすよね。動画は大丈夫っすよね」 白髪の紳士は無言で首を一度だけ横に振った。 「……っすよね」 潤は振り向いてバンドマンに 「当たり前だろ。お前仕事せーよ」 「はーい。じゃ、お客さんありがとうっしたぁー」 そう言うと、潤の胸を軽く突いて後部座席に押し込んだ。 「おおおーーい」 潤の声をかき消すかのように、白髪の紳士が、ドアを閉めた。 「恐れ入ります」 白髪の紳士が頭を下げた。 「いいっすよ。あざーす」 バンドマンがまたスマホを手にした。 白髪の紳士がジロッと鋭い目をしてバンドマンを睨みつけた。 「すいません」 素直に謝る、バンドマン。 「……ダメっす」 ボソッと白髪の紳士が答えて、運転席に乗り込んだ。 バンドマンは明るい笑顔になって 「ロックすねーサイコーっす。イェーーイ」 超高級車のお見送りには似つかわしくないが、 金髪皮パンに、コンビニ制服のバンドマンの雄叫びで 発車していった。 「おーい」 コンビニのドアのところで先輩従業員がバンドマンを呼んでいる。 「なんすかぁ」 コンビニは日常業務に戻っていった。 潤は、これから非日常を経験する。……そして、想像を超えた事実を知ることになる。
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