古本に挟まれた栞

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ここに一冊の本がある。古本屋に売っていた本で私がつい最近買った物だ。 「あー、面白かった!買って良かった。新品を買うには勇気が要るけど、古本なら失敗してもダメージは少なくて済むもんね」 最近迄パソコンやスマホで電子書籍ばかりを見ていたせいか、急に紙媒体の本が恋しくなった。そして本を買おうとしたが、新品を買ってつまらなかったら嫌だなと思い古本屋に行って買ったのがこの本だった。 古本なら安く買えるし、もう一冊位買おうかな? 「ん?何この栞。古本に挟まってたの気付かなかった」 奥付の手前で挟まれていた為、栞があった事に今気付いた。 『この本に栞を残す。この本を気に入ってくれた君へ、読んでくれてありがとう』 「この字って男性のだよね?ロマンチストな人だなぁ」 作者なのかな?自分の本を古本で売るなんて芸が細かいな。 「明日又古本屋行ってみようかな・・・」 少し気になった私は翌日、同じ古本屋に行って同じ作者の古本を探してみた。 「・・・無いじゃん。作者じゃ無かったのかな?」 私は古本屋を出て家に帰ろうとした。けれどーー。 「古本屋は此処だけじゃ無いよね?」 やっぱり気になって少し離れた古本屋に足を運んでみる事にした。 「・・・有った」 同じ作者の本が古本で売られていた。タイトルもロクに確認せず購入してしまう。 「栞は・・・」 古本を開き、奥付の手前に栞が挟まれていないか確認する。 「ビンゴ!」 其処には最初の栞と同一人物の字が栞に書かれていた。 『ちゃんと読んでくれているかい?それでもこの本を買ってくれてありがとう』 「うわー、踊らされてるな私」 ちょっと恥ずかしい気持ちがあるものの、私はこの栞を書いた人に心奪われていた。 「ちゃんと読みますよーだ!」 しっかりと全文を読んでから本を閉じる。 「この作者は天才か・・・」 タイトルを見てこれが推理物であると始めて気付き、読み終えればこの本に挟まれた栞の内容も頷ける。作者には私の行動が手に取るように解っていたんだ。 「悔しいけど、面白かった。ファンレターでも書こうかな」 宛先はどちらの本も同じ住所が載っていたので其処宛に栞の事も含めて感想を書いて送ってみた。 「ファンレターなんて書くの初めてだったけど、ちゃんと届くと良いな」 私は大人になって初めて誰かに対して手紙を書いた事に今更だけど気付いて、その日はずっと赤面して過ごした。
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