7人が本棚に入れています
本棚に追加
そしてついにその日が来た。
いつものように、僕とショーヤは丘の上の展望台へと出発した。
ところが、途中で僕は胸の痛みを感じるようになった。その痛みはどんどん増していき、息も切れ切れになり、呼吸が苦しくなった。
「ユウスケ、ちょっと休む?」
ショーヤが足を止めて、すっかり動けなくなった僕の顔を覗き込む。
僕は立っていられなくて、地面に両手をついた。
ドアの隙間から風が漏れるような音が聞こえ、僕の影の肩が大きく上下するのが見えた。
「せっかくここまで来たのに……」
僕は立ち上がり足を運ぼうとしたけど、よろけて倒れた。その拍子に咳が止まらなくなる。
ほんの細い管からしか呼吸ができない息苦しさを繰り返しているうち、視界が掠れてチカチカ点滅を始める。
この感じ知ってる。
すぐに病院へ行かなきゃいけないレベルだ。
『フウヤ、フウヤ、たすけてッ!』
僕は心の中でフウヤを呼んだ。
もし声が出せるなら、大空にむかって叫んでいたと思う。
「ユウスケ! ユウスケ!」
僕の名前を呼ぶショーヤの声が、水の中で呼ばれているようにこもっている。
苦しくて、苦しくて、もうだめだ。
もう何も見えない、何も聞こえない、息も……、でき、ない……。
刹那。
ーーパンッと、喉の奥で蓋が外れた。
途端に激流の空気が流れ込んでくる。
「ヴぉー」
僕は、大きな音と一緒に息を吸い込み、咳き込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!