可哀想な運命と引きかえに、与えられる奇跡

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その夜、僕は夢を見た。 僕はツバメの姿をしていた。ツバメの僕は、海の上を滑ったり大きな山や都会の街を通過して、そしてこの町を訪れた。 僕はヘトヘトに疲れていて、ある家の中に飛び込んでしまった。 気がつくと、ふかふかのベッドに寝ていて、すぐそばには優しそうな少年がいた。 僕がこの町にやってくるまで、どれだけ苦労したかを彼に聞かせると、目をキラキラさせながら感嘆の声を上げて話を促す。 その楽しそうな様子に、僕はすっかり気を良くして話し続けた。時間を忘れて過ごしていくうちに、少年のことが大好きになった。 ある日彼が僕に、 「ツバメは南の国に行くのだろう?」そう聞いた時、僕は悲しくなった。 「君のそばを離れたくない。ずっと君と一緒にいたい!」 僕は自分の口から出た言葉を聞いて、やっとわかった。 『ツバメと少年』は、ふたりの絆の物語だったんだ。 可哀想な運命と引きかえに与えられる奇跡、そう思った僕は浅はかで愚かだった。 ふたりはずっと一緒にいたかった。本当にただそれだけだったんだ。 目を覚ました時、僕はまだフウヤの存在を感じていた。 フウヤは僕と一緒にいてくれている。 僕もずっとフウヤと一緒にいたい。
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