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あるところに、重い病にかかった少年がいた。
彼はもう何年も病院から出たことがなくて、外の世界といえば病院の中庭のみ。それ以外は、小さな子供だった頃のかすかな記憶に残る海辺の景色だった。
青くて広くてキラキラしていた。ザザザザーーっという音と、背の高い水が襲ってくるのが怖くて海水に足をつけられなかった。
あぁ、僕にもっと勇気があったなら、波打ちに寄せる水の感触を記憶に残せただろうに。
少年は海の感触を憧れでもって想像し、もう決して感じられないだろうと、諦めをもって絶望していた。
ある日のこと。衰弱している一羽のツバメが少年の病室に迷い込んだ。
彼は小さなベッドを作り、疲れて動けなくなっているツバメをそこへ寝かせた。
一晩ぐっすり寝たツバメはすっかり元気になった。
ツバメはお礼に、色々な町の話や冒険譚を聞かせた。
少年はツバメの話を聞くだけで、自分も冒険したような気持ちになった。それでツバメがこの町にいる間、話を聞かせて欲しいと頼んだ。
もちろん、ツバメにとっても安全な寝床はありがたい。
ふたりはすっかり友達になったんだ。
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