ツバメと少年の話

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僕は閉じた本を胸に抱えて、こぼれた涙を上着の袖で拭った。 この中の少年は、まるで僕みたいだと思っていた。 少年と同じように僕も病気だったから、冒険はおろか、ちょっとした遠足や友達との外出さえ、ままならなかったし、具合が悪い時は、このまま死んじゃうんじゃないかって、怖かった。 でも僕のところにやって来るツバメはいないし、奇跡が起こらないことも知っていた。だから、本当はこの本はあまり好きじゃなかったんだ。悲しくて泣きたくなるから。 今日も僕はやっぱり悲しくて泣いた。でも、この気持ちは今までと違う。 だって、僕はもう少年とは違うから。 あの日、ショーヤは僕に魔法をかけてくれた。それはまるで病室に飛び込んできたツバメのように、僕の毎日をガラリと変えてしまった。 ずっと内緒にされていたけど、ショーヤには風と話ができる能力があったらしい。そして紆余曲折の末、北風の力を手に入れたショーヤは、僕の病気を治してしまった。それどころか、僕まで風と話ができるようになったというおまけ付きだ。 とても信じられない話だけれど、実際僕は元気だし、翌日ショーヤの友達である『北風のフウヤ』と会い、友達にもなった。 フウヤはいつも僕を気にかけて空から舞い降りてくる。 今も、泣いている僕を心配している。 ー ユウスケ、どうしたの? どこか痛い? それとも苦しい? 「ううん、なんでもないよ。フウヤ……」 僕は僕の周りをゆっくり流れている風に手をかざして、柔らかく手のひらに触れるフウヤを指でなぞった。 涙がもうひとつポロンと落ちた。 フウヤはそれをさらりと流して、僕の頬を撫でる。 「ただ、寂しいだけなんだ。せっかく友達になった君と会えなくなるのが」 しばらくしたら、僕の町に春が来る。 それは同時に、北風が北の国へ行ってしまうことでもあるんだ。
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