春が来る

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春が来る

ここのところ、風の声が騒がしい。 春風の到来が、いつもより少しばかり遅れているようだ。 北風たちは春風に押し出されるように、この町を離れ更に北の町へと移動する。 当然北風のフウヤも、みんなと一緒に北の国へ行く、はずなんだけど。 つい昨日のことだ。内緒話をするように僕の耳元にやって来たフウヤは、とんでもないことを言い出した。 ー 僕がユウスケの体の中に入ろうか? そうすればユウスケは、春の間じゅう元気でいられると思うんだ 。。 本来北風の力は、雪の結晶の中に紛れている。だから雪が溶けると、北風の力も一緒になくなってしまう。 春になり雪が溶け、北風がみんないなくなってしまったら、この力は自然と消えてしまうだろう。そう北風の長老が言っていたとか。 もともと北風の力とは、冬限定の力なのだそうだ。 最初にこの話を聞いたとき、ショーヤは泣きながら悔しがった。 あんまりショーヤが泣くもんだから、ショーヤが病気になってしまうかと心配したほどだった。 ー ユウスケ、ごめん フウヤは悲しそうな声で、僕にあやまった。 「いいんだよ。僕は健康な体を手に入れた。たとえ冬の間だけだったとしても」 そうさ。この力はいわば魔法。ただ、元の僕に戻るだけだ。 今は毎日だって、この展望台に上がって来られる。このお気に入りの場所に。 それを幸せだと思わなきゃいけない。
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