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フウヤが僕の体の中に入ると言った時、僕の胸はドキンと弾んだ。
フウヤの言う通り、春の間じゅうこのまま元気でいられるとしたら……。
春、この展望台から眺める桜並木は最高だ、ってショーヤはいつも聞かせてくれた。
町の真ん中を流れるセセリ川に沿った桜並木が、蛇行しながら向こうの山まで続く様は壮観なんだそうだ。
上から俯瞰する眺めは、きっと下からじゃわかんないくらい綺麗なんだろうなぁと、毎年想像してた。
もし見ることができたら、それこそ奇跡なんだろうな、って。
だってこの丘を上がることは、僕には絶対にできない激しい運動のひとつだったから。
……元気でいられるとしたら、僕はここから桜を眺められる?
だけど、僕の体の中に入ったフウヤは一体どうなるんだろう?
そう考えて僕は空を見上げた。
ベールのように薄っぺらなうす雲が水色の空の中でじっとしている。
本当ならあの雲と一緒に北の国へ行かなきゃいけないはずのフウヤが、僕の体に入るということは……。
『ツバメと少年』よりひどいよ。
僕はすぐには死なないけど、フウヤだけ消滅してしまうということだろ?
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