春が来る

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僕は頭をぶんぶん振った。 違う。そんなの最低の人間だ。 病気なら何を言っても、何もしてもゆるされると思っちゃいけない。 ただでさえ、周りの人に迷惑をかけていたんだから。 ショーヤがお母さんに甘えたくても、僕のために我慢していたことを。お母さんやお父さんがどれだけ僕のために時間やお金を使っていたのかを知っている。 みんなみんな、僕の病気が良くなればと思っていたからだ。 それなのに、僕は今、嫌なことを考えた。 僕は可哀想なんだ、って。 展望台からの桜が見られないくらいで。 運動ができないくらいで。友達と遊びに出かけられないくらいで。 そりゃ、発作が起こる度に死にそうに苦しいけれど、実際には死んだりしない。 もっと苦しんでいる人が、病院にはたくさんいる。 『ツバメと少年』の少年みたいに、病院から出られないまま、死んでしまう子もいる。 それに比べたら、僕は家にも帰れるしお母さんのご飯も食べられるし……、たくさんの楽しい思いもしている。 フウヤを犠牲にして僕がしたいことが、展望台からのぞむ桜だなんて。 そんなの許されない。許されるケースは『少年』みたいに……。 そうだ。 ーー死んでしまう、だけだ。
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