第1章 わらび

5/5
前へ
/88ページ
次へ
 あ、そうそう。昔から気がつくと迷子になってるのよね。なぜか分からないけど。  考えごとをしていると、いつのまにかよく分からない場所にいたりするの。  知らない路地だったり、山の中だったり。  こないだなんて、予防接種を待っている人たちの中にいたんだけど、どうしてかなあ。  うっかり私まで注射を打たれてしまうところだったのよねえ。危ない危ない。  斎藤くんに話したら笑われたっけ。  物心ついた頃から、今にいたるまで、本当によく迷子になるなあ、私。  そのせいなのかな。怖いって思ったこともないなあ。  あ、そうねえ、むしろ楽しいかも?  私の住んでいる町は、これといって特徴のない平凡な町。人数はあまり多くない。  都会まで行くには電車とバスを乗りついで何時間もかかる。  ただの田舎町だって嫌がってる子もいるけど、私はこの町が大好き。  いつもと変わりない風景。いつもと変わらない日常。顔なじみのクラスの子。  ずうっとこうやって毎日が過ぎていくのかなって思ってた。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加