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「祖母から、『蓮子ちゃんと同じ高校の女の子が帰ってこないそうよ。なにか心当たりある?』って聞かれたんだ。とりあえず、レインコートを着て、近所をウロウロしたら、『山に女の子が迷い込んでる』ってあちこちから聞こえてくるから、お前だろうと思って、急いで探しに来たんだ」
蓮子さんにスマホを借りようと思ったら、持ってなかった。
私が帰ってこないって聞いて、急いで飛び出してきたらしい。
まあ、山を降りれば、なんとかなるわよね。
……って、蓮子さん、今なんて言った!?
「花!?」
びっくりして、ちょっと声が裏返っちゃった。は、恥ずかしい……。
「そうだ、花だ。言っとくけど虚言癖とかじゃねえぞ」
「うん」
私はこくこくと頷いた。
「物心ついたときには、花の声が聞こえてたんだ。もちろん植物全般聞こえるけど、木なんかはそのときによるな。でも、なぜか花だけははっきりと声が聞こえるんだ」
こっそりと見た蓮子さんの横顔は、真剣で美しかった。
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