序章 見てる人は見ている、ということ。

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――ピコンっ 右手に持っているスマートフォンから電子音が鳴った。 確認するまでもない。この音であれば俺の利用しているSNSの通知だろう。 誰かが俺の先程つぶやいた投稿に返信でもしてきたのだろうか。 どうしたものか、今更俺の意思は変えられないのだが、どうしてかその通知が気になっている自分もいた。 「まぁ、さいご、だしな」 意思が変わらないのなら、別に返信くらい見てもいいか。なんて思った。 久々に鳴ったとはいえ、あまり鳴ることのない通知音。それに心惹かれている俺がいるのも事実。ここは自分の気持ちに素直になってもいいだろう。そう思った。 右手のスマートフォンを操作し、目的のアプリを開く。 アプリの通知欄には俺の知らない人物の名前が載っていた。 「……鈴、誰だろう」 鈴という名前のユーザー。プロフィールには本人の写真なのか、「アイドルか?」と思わせるような可愛い女の子がいた。肩口まである黒髪はゆるくウェーブがかかっており、ふわっと優しい印象を受けた。顔に至っては目がクリッとしていて何とも言えない愛らしさを感じられるし、鼻立ちもすごく整っているのでよりアイドルだと思わされる顔立ちをしている。全体的な印象としては、素直で優しい天使のように俺は感じられた。 こんな天使な子と今まで関りはない。はず。新しいアカウントなど、いろいろ偽る方法はあるだろうが、そんな事をわざわざ俺にするような奴はいないので、確実に俺の知らない人物だと思える。そんな見ず知らずの彼女は俺なんかに何を伝えるため返信なんてしてきたのだろうか。そう思うと、何故かスマホを持つ手に汗が滲んできた。 一呼吸おいてから、返信欄をタップして内容を確認することにした。 返信欄には短くシンプルな一文があった。
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