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「太陽のかみさまは男で、月のかみさまは女のことが多いけれど、君の故郷では逆のようだね」
「ああ、そういえばそうかもしれない」
ライオンに言われて少し考えた。アマテラスとツクヨミ。女神と男神。
「あなたは色々知っているね」
「そうかね」
月がきらきらと瞬く。
「うさぎ、うさぎ、なにみてはねる」
思わず歌うと、ライオンは悲しそうな表情をした。そんな顔をしないで。
「ごめんなさい、歌わなければ良かった」
「君の故郷の歌だね」
「そう。月にはウサギがいるの」
ウサギ。あのウサギ。可哀想なウサギ。
「……あのウサギは、誰に殺されたのかな」
私がそう言うと、ライオンはぴたりと止まって、一度ゆっくりとまばたきをした。
私たちは逃げている。
「……僕が疑われている」
「でもあなたは犯人じゃない」
犯ライオンというべきか。
「そう。僕は殺してない」
その可哀想なウサギの尻尾が見つかったのは、とある建物の一室だった。
その建物は五つの部屋から成っている。正方形の一部屋を中心に、その各辺に更に一部屋ずつ、正方形の部屋が繋がっている。間に廊下などは無い。漢字の「十」のような形だ。
その中央の部屋で、うさぎの尻尾が見つかった。無残に千切れた、まぁるい尻尾。
「探偵」たちによる鑑定の結果、そこに生体反応は無かったらしい。
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