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卒業式の朝
白んだ朝焼け。眩しいほどじゃなく、目に優しい。手がかじかむ寒さも和らいできて、写真を撮るにはちょうど良くて、カメラを構える。
「先輩! やっぱり居た!」
大きな声に振り替えると、写真部の後輩が駆け寄ってくるところだった。そんなに慌てなくても私は逃げないのに。
「昨日雪が降ったから、先輩ならシャッターチャンスだ、なんて言ってきてるんじゃないかと思いました! おはようございます!!」
私の隣に立って、捲し立てるように言う後輩に、
「単純とでも良いたいのかな?」
と返せば、へらりと笑われた。
「違いますよー。先輩の写真愛にケーフクしてるんです!」
絶対に敬服の意味を分かっていない軽薄さに呆れて、手元のレンズへと視線を戻した。ああ、梅の枝から雪がさらさらと落ちている。綺麗。ココで一枚、カシャ、と。
「でも卒業式の前に会えてよかった。どうせ式が終わったらさっさと帰っちゃうでしょ?」
「だって、きっとうるさいし」
だから、校内で写真を撮れるのはこれが最後。カシャ。卒業する前日に季節外れの雪が降るなんて運が良いと、カメラ片手に早く来て静かな校内を回っていたというのに、にぎやかな後輩に見つかってしまったものだ。
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