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真摯に作業に打ち込む入所者達の多くが、明るい表情をしている。病の回復振りが、傍目にも見て取れるようだった。
薙は思わず微笑する。
(こんな施設で、希美を治療する事が出来たら…)
ふと、そんな考えが脳裡を過った。
充実した設備と、自立支援の体制。
個々の病状に応じた適切なケア。
『わかばの園』は、その両方を備えている。
希美のケアについては、自宅療養を考えていた薙だったが…此処に来て、精神障害者施設に対するイメージが、ガラリと変わった。
(こういう選択肢もあるのかも知れない…)
いつしか自然に、そう思える様になっている。この施設の代表者が、伸之の親友であるという偶然にも、運命的なものを感じた。
まるで、今は亡き父・伸之が導いてくれたかの様で…何やら、神聖な気分になる。
(もしかして、一慶もボクと同じ事を考えて、此処に連れて来てくれたのかな?)
真意を質そうと、端正なその横顔を盗み見たが、一慶は何時に無く言葉少なに目線を向けているだけであった。
彼は今、何を惟っているのだろう?
訊ねたい事なら山程ある。
母親の事。彼自身の事。
孝之との間に、当時どんな遣り取りがあったのか──。
だが、寸での所で、薙は踏み留まった。
出掛かった言葉を、喉の奥に飲み込む。
(折を見て訊いてみよう。今は、久し振りに会うお母さんの事で、気持ちが揺れているかも知れないし…)
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