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里へ向かう車中。
孝之は器用に片手でハンドルを操りながら、徐ろに切り出した。
「悪かったな、突然こんな事になっちまって。いちが一緒に行けなくなって、ガッカリしたんじゃねぇか?」
「そっ…そんな事無いよ!あるわけないじゃない!!ボク、おっちゃんと一緒で嬉しいよ、本当に!!」
必死に言い訳をする姪を横目に見ると、孝之は小さく苦笑を洩らす。
「──昨日、美野里に会いに行ってくれたんだってな?有難うな。」
「ううん。あまりお話は出来なかったけど…会えて嬉しかったよ?」
それは、薙の本心だった。
混沌としてはいたが、美野里の魂魄には、まだ母親らしい愛情が宿っている。それが解っただけでも、安堵する事が出来た。
また。今まで知る由も無かった一慶の苦悩の一端を、垣間見る事も出来た。彼が抱えるものの意味や重味を、ほんの少しだけ理解出来た気がする。
悪しき技の餌食にされた者達の実態を知る、良い機会にもなった。
「…希美の件で、一慶が心配していた理由が良く解ったよ。邪霊に憑かれた人の精神は、あんなにも壊れてしまうんだね…。ボクは、認識が浅かった。良い勉強になったよ。」
深い反省の念を込めてそう言う姪に、孝之は複雑な笑みを浮かべて頷いた。
「いちの奴は、美野里の変貌を通して、嫌と言うほど辛い現実を突き付けられて来たからな…。アイツは、錠島家の跡取りだ。本当なら、遥よりも高い地位から、当主の守護天となる筈だったんだよ。」
「遥よりも…って、どういう意味??」
「あぁ…《金の星》には、な。甲本家を中心に、鍵島家と錠島家──二つの直系の流れがあるんだ。」
「鍵島と錠島…鍵と錠?」
「そう、鍵と錠前だ。この二つの分家が当主の守護者として脇を支える事で、一族の根幹を築いていた。『金の御三家』と言ってな。錠島家は、甲本家に続く第二の当主継承権を持つ家柄だった。つまり、鍵島家より立場的には上だったんだよ。」
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