【三段目】浄魂の剣 六星剣 ―ロクセイケン―

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 電話の向こう側から、苺が自信満々で訊ねて来る。 『どう?アタシのコーデは気に入った???』 「うん…有難う、苺。助かったよ。」 『どういたしまして。ねぇ、薙。本当のところどうなっているの、あなた達?』 「別に…どうもなっていないよ。」 『本当に?アタシに隠し事は無しよ??』 「解ってる。何かあれば、真っ先に苺に相談するよ。今回の…アレは、その…お遊びみたいなものだから。一慶だって、本気でデートだと思っている訳じゃないよ──多分。」  言い訳しながら、自虐的な気分に沈み込んでしまう薙。そんな彼女に、苺は年上らしくアドバイスをした。 『馬鹿ねぇ。弱気になっちゃ駄目よ。もっと自信を持ちなさい!アイツがそんな風に誰かを誘うなんて、今だ(かつ)て無かった事なのよ?それほど画期的な事件なんだから!それにね。アタシ、少しだけ期待しているの。アンタなら、アイツを救えるんじゃないかって』 「救う?」 『そうよ。暗い迷宮をさ迷っているのは、(むし)ろアイツの方だわ。年季が入っている分、根が深い…。だから、アイツは『難しい』わよ?なかなか本音を語らないし、近付こうとすると、巧くはぐらかされてしまう。心の奥では、救いを求めている筈なのにね。決して誰の手も取ろうとしないの。そうやって、今も自分を責めているんだわ』 「…苺…」 『だけどアンタなら、アイツの心を()かす事が出来るかも知れない。いいこと、薙?今日は、目一杯気合いを入れて行くのよ!()い報告を待っているわ。じゃあね!!』  (まく)し立てる様にそう言うと、苺は一方的に通話を終わらせてしまった。 謎めいた彼女の言葉の数々が、薙をいっそう困惑させる。  情けない気分で眺める鏡の中には、シックなスリップドレスと、スモークグレイの薄いストールを首に巻いた、見慣れない自分が映っていた。 頼り無げな表情は、着馴れないワンピースに戸惑っている所為(せい)なのか──それとも、現状に混乱しているからなのか…。 (めく)るめく様な出来事に流されて、最早、自身の気持ちすら図りかねていた。  頭の中で何度となくリフレインしているのは、何気無く呟いた苺の言葉である。 「救う…ボクが、彼を?」 fbcc9663-0ca1-4d65-b262-967be60b7a58
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