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宵闇に堕ちて、遠いソラ
小さな光が上にあった。
気づけば自分は淡い光の下にいた。
ただ自分がそこにいて、暖かくのない光以外の何もない部屋の中央に佇んでいた。
何もかもを遮断した固く冷たい壁と床に囲まれて、よくわからないまま自分はある運命を辿る最中にある。不思議なことにもうすぐその運命の終着点が来ると、誰かから教えられたように理解していた。
......訂正しよう。この部屋は何もかもを遮断することはなかった。ときおり壁を通り抜けて響いてくるのだ。重いドアの開く音と、
「や、やめろっ!」
生者の叫び声が。
「嫌だ死にたくないやめてくれぇっ! あぁ痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいぃぃぃぃぃぃぃ――」
もがき苦しんでぷつりと消える生者の声。おそらく死者となってしまったのだろう。
彼の元に運命の終着点――死がやってきたのだ。そして死は遠からず、こちらにもやって来る。
その時が来れば自分もあのように叫ぶのだろうか。
とりあえず試しで腕をつねってみる。痛い。
痛いのだったら死にたくないな。どうせなら楽にしてくれればいいのに。
そんなことをぼんやりと思っていた。
何もない部屋に再び静寂が訪れる。死の予感を持って未だに開かない扉を前にして待つ。頭上の光はゆらゆらと動いて暖かくのない明かりを照らす。壁からまた叫び声が聞こえては消える。
どれくらいの時が経ったのだろう。
変わらぬ小さな世界の風景の中に異質な音が紛れ込んだ。
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