宵闇に堕ちて、遠いソラ

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『それでその独房から脱出する方法なんだけど、一応周りを見てくれる? なんか崩れそうな壁とかない? ボクも収容所の周り見たから、たぶんないとは思うけど』  ドクボウ? シュウヨウジョ?  言われた瞬間は何のことだがさっぱりだったが、記憶の保管庫がそれを教えてくれる。  俺の認識だと収容所は罪を犯した者、もしくは敵国の捕虜を収容する施設で独房はその施設の部屋だ。  ここはそんな場所だったのか。寒気が走る。  単語を聞いた途端に知識を思い出した。そのことから漠然と自分の記憶が抜け落ちているのがわかった。それで自分がどういう人物なのか、今さっきまでぼけーっとしていた自分の状態はなんだったのか。  そこのところを色々と整理して考えたいところだが、恐ろしい何かが来るという時間制限が掛けられている。今はドアの向こう側にいる者の言う通りに動いてここから出る方法を模索しよう。  四方を囲む壁を調べてみる。石造りのようだが崩れる気配なんてないし、試しに叩いてみても良い返事は反ってこない。それを扉の向こう側の人物に報告した。 『んー、やっぱ現実的な方法はダメか。ねぇ、その部屋になんか異質なモノとかない? なんじゃこりゃ!? こんなの現実にはねぇだろ! って感じの光の玉』 「ああ、一応光の玉が浮いてるな......」  今も尚、この部屋を照らしている自分の頭よりも一回り大きい丸い光。気になって仕方がない。 『そう、それ! こっちに頂戴!』 「頂戴って、触って大丈夫なのかアレ?」 『大丈夫。今、思い付く手段それしかないから』
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