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「はい! もちろん、新しい魔道具にも興味はありますけど、得意なのは、古い型の物ですね。うん、魔力方程式は結構複雑ですけど、今ある物とそう変わりは無いですね。でも、方程式が大分崩れちゃっていますね。あ、と……」
肉眼と魔道具のモノクルと両方で蓄音機を確認して、致命的な大きな欠陥を見付けて、僕は一瞬言い淀んだ。
「何だい?」
「もしかして、これ、誰か素人さんが開けてみたりしましたか?」
女性は僕の顔をまじまじと見て来る。モノクル越しに見えた彼女の魔力は僕とどっこいどっこいと言う所だった。やっぱり、さっきは見えないのに一緒に見ていたらしい。面白い人だな、と思う。
「……分かるもんかい?」
絞り出すように問われて、僕は苦笑を浮かべながら大きく頷いた。
「分かりますよ。外観から部品に明らかな傷が出来ていますから。専用の工具では付かない傷なので、素人さんかなって」
「ふん、何でも開けて見ないと気が済まない人間も居るんだよ!」
「え!? もしかしてお客さん、えっと……?」
ふんぞり返って言われて、僕はびっくりして目を白黒させると女性をまじまじと見詰めてしまった。
「シニードだよ」
「シニードさんが開けたんですか!?」
問い掛ける声も、どうしても大きくなってしまった。だって、魔道具はどんなに簡単な造りだったとしても、基本的に素人の扱える物じゃないと言うのは常識だ。それは、子供だって知っている。何より、魔力暴走と言う危険性を伴うから、固く禁じられているのだ。
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