魔道具修理ファイル1143

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 白い布の上には、おびただしい数の部品が有った。それを丁寧に、着実に組み立てて行く。最後の部品を小さな穴にはめて、これまた小さなネジで固定する。詰めていた息を吐いて首に掛けてあったタオルで汗を拭うと、そっと起動部に魔力を流す。『ぶおんっ』と小さな音を立てて、魔道具が起動した。成功だ。問題無く修理出来た。この瞬間が、やっぱり一番好きだ。思わず頬が緩む。けれど、長く魔力を通してもいられないので、魔力を止める。  すると、そこに、カランカラン、と鈴の音が響いた。 「ごめんくださーい」  高い声も届いて、僕は慌てて作業台から立ち上がり、店の方(と言っても歩いて三歩の直ぐの距離だけれど)へと足を運んだ。そこには、まだ年若い少女が居た。 「こんにちは、いらっしゃいませ」  作業に使っていた油で汚れた手を前掛けで拭きながら出て来た僕に気付いた少女は、にっこりと微笑うと首を傾げた。赤髪を二つに束ねた小柄な子だった。何処かのお店のお使いだろうか。 「こんにちは、えっと、魔道具屋さん?」 「ええ、そうです、正確には魔道具修理屋ですけど。店主のキリルです」  問い掛けに僕がそう答えると、大きく頷いて少女は気楽に手を差し出して来る。握手をして良いものか迷いながら(何しろ、僕の手はさっきまで油まみれだったのだから!)手を握ると、ぶんぶん、と振られた。体格に似合わず力の強い子だ。 「キリルさんね。私はドウェインさんの使いでマリアンです。早速だけど、魔道具修理をお願いしたくて来たの」
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