魔道具修理ファイル1102

9/15
前へ
/42ページ
次へ
「魔石も摩耗するんですよ。魔力補充を行うと半永久的に使えると思っている方が多いですが、摩耗によって魔力補充が出来なくなって来るんです。だから、魔石は定期的に変える必要が有るんですけど。魔法鞄は持っていますか?」 「ああ、成る程、魔法鞄は魔石を定期的に交換するな」  迷宮から発掘される魔道具である魔法鞄は、容量の少ない小型の物はともかく、容量の大きな大型の物は未だ人工的な量産の難しい魔道具の一つだ。絶対数も少ないから、大事に扱われている。魔石も必要に応じて頻繁に交換される事から、大型の魔法鞄はトップランクの証でもあった。魔法鞄の魔石交換は有名な事なのに、他の魔道具にもそれが必要だと考えない事がおかしくて、ちょっと笑ってしまう。 「そうです。使用頻度が高い物程、摩耗が早いので魔石の交換がより早く必要になります。魔力灯、特に携帯魔力灯は動かなくなったら普通買い替えちゃいますから、魔石の交換は必要無いんですけどね」 「家で使っている魔力灯は?」  意外な事に、ドレイクさんは魔石の交換などと言う話題に興味があるらしい。そう見せているだけかもしれないが。退屈な話題だろうに、と思いながら、僕は丁寧に説明を続ける。 「本当は交換が必要なんですけど、あれも動かなくなると気分転換に変えられる方が多いじゃないですか」 「成る程。確かにそうだな」  魔道具のモノクルに掛け変えると、僕は黙ってじっくりと魔石を見詰めた。薄っすらと何かの文字が浮き出ているのだが、摩耗が激しく上手く読み取れなかった。だが、少なくともオークと言う古代大陸語の文字配列では無い。 「やっぱり、これ、かなり改変されているけど、オークの魔石じゃないなあ。うーん?」
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加