魔道具修理ファイル1102

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「凄いな。それも、見せて貰っても? もし、秘匿技術なら、構わないんだが」 「大した技術じゃ無いので見ていて良いですよ。じゃあ、お預かりします」  一応、確認の為に魔道具のモノクルを掛け魔石を見ると、その上にくっきりと古代大陸語でバジリスクと記されていた。その上、状態Aと表示されている。 「凄い。状態Aって初めて見た。このバジリスクは、一撃で倒したんですか?」 「ああ。その方が素材に傷を残さずに済むから、そう出来る相手は出来る限り一撃で倒す事にしている」 「……本当に、トップランクって凄いんですね」  思わず苦笑が滲む。状態Aは最も素材の状態が良い事を示す。そんな素材を扱える人は限られている。それが出来るから、トップランクと呼ばれるのだろう、とようやく納得出来た。  リスグランドの冒険者ギルドでは、冒険者達をAからFでランク付けしランクを分けている。それによって受けられる依頼が変わるからだ。当然のように、ドレイクさんや彼のパーティーメンバーは最高ランクのAだった。  僕はモノクルを外すと、もう一度作業台の方へと戻り、そっと白い布を拡げ、魔石をその上へ乗せる。そして、自分はしっかりと作業椅子に腰掛けた。そして、モノクルを掛け変え、魔道具の心臓部を見据えた。 「えっと、元のカットは……ルーナ・プレーナですね。うん、基本のカットだから、僕でも出来ますね、ちょっと時間を貰いますけど」 「明後日までに遣ってくれれば構わない」  ドレイクさんにきっぱりと言われて、きょとん、としてしまう。 「あ、えっと、一時間ぐらい頂ければ、出来るって意味で……」  既に作業を始めてから一時間以上は経っている。作業時間が延びる事を伝えなければ、と思っての事だったが、ドレイクさんはもっと時間が掛かるものと思っていたらしい。 「っ!? 魔石屋に弟子入りでもしていたのかい?」  自分に興味を持たれて、どきり、とまた胸が跳ねた。ただの好奇心だろうが、知って貰えて嬉しいな、と思ってしまった。慌てて、ふるふる、と首を横に振ると返事をした。 「父が魔石屋だったんです。まあ、殆どは独学ですけど。じゃあ、始めます」  そうして、静かに魔石に向き直ると、別の棚から専用の工具を取り出した。魔石の加工は、魔道具修理と同じように慎重に始める必要がある。これは、父の教えからだった。
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