魔道具修理ファイル1143

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「ドウェインさんのお店の人ですか。タニヤさんはお元気ですか?」  ドウェインさんは、冒険者相手に個人で素材や魔石の買い取り店をしている人だ。いつも魔道具を持ち込んでくれていたドウェインさんの奥さんを思い出して聞くと、マリアンは両手を子供を抱えるような仕草をして、その後、今度は両手を大きく振って見せた。 「タニヤさんは今月から産後のお休みなの。だから、本当に忙しくって!」 「それは大変ですね。えっと、魔道具を見せてもらっても良いですか?」  同意した後、僕が水を向けると、マリアンは慌てたように手に持っていた籠を近くの商品が陳列されている台に置いて、中から魔道具を取り出した。棚には確かに強化魔法が掛かっているけど、もう少し気を遣って欲しいな、なんて思いながら魔道具を見る。 「ごめんなさいっ、これです!」 「これは、鑑定の魔道具かな」  一瞬で何か分かったけど、一応ちゃんと確認の為に問い掛ける。マリアンは僕の手に両手でしっかり渡すと大きく頷いた。大事な魔道具だと分かっているからだろう。 「ええ、簡易鑑定の魔道具なんだけれど、何だか調子が悪いって、ドウェインさんは言ってたわ」  触れた感じから、明らかにその魔道具には異常を感じていたが、魔力を使って確かめる必要が有った。 「そうですか。ちょっと魔力を通してみましょうか。うわっ……これは、確かに、問題がありそうだな」  軽く指先から起動部に魔力を送ると、一気に魔力を吸われる感覚が有って、慌てて手を離す。明らかに魔力方程式が崩れていた。
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