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「うん? 起動の魔力が少なくて済むようになったね?」
「よく分かりますね。本当は、そのくらい、燃費の良い魔道具なんですよ」
僕が苦笑しながら言うと、僕を振り返ってシニードさんは眉をひそめて見せた。
「……アンタ、分解は良くなかったって言いたいんだね?」
「出来れば、今後はしないでもらいたいです」
「分かったよ。今度おかしくなった時は、大人しく持ち込むとしよう」
きっぱりと僕が答えると、シニードさんは大きく頷いて了承の言葉をくれたので、安心してしまう。魔道具の魔力暴走は余り聞かないが、本当に危険な事なのだ。
「ありがとうございます。では、料金の方ですが……」
部品代を次々と書き込み、作業量と特急量を足すと、何と銀貨三十枚にもなってしまって、ちょっと焦ってしまう。部品が特注の物ばかりで単価が高かったのだ。
「えっと、このくらいに、なるんですが……」
けれど、僕がおずおずとメモ帳を差し出したら、ぴしゃり、と手を叩かれてしまった。
「銀貨三十枚だって!? こんな新品同様にしてその値段かい!? アンタ、何を考えているんだい!!」
「えっ、え!?」
痛みより驚きで目を丸くしていると、畳み掛けるようにシニードさんは言葉を重ねて来る。
「私は、これを金貨三枚で買って貰ったんだよ!? 金貨一枚でも良いくらいだ」
「いや、そんな! そんなには貰えません! 部品もウチにある物で賄えましたし、そもそも、僕は魔道具を触らせて貰えるだけで……」
僕が予想もしなかった余りの高額な料金を提示されて、大慌てで言い募ると、ぴしゃり、ともう一度、手を叩かれた。
「黙らっしゃい! 金貨一枚だ! びた一文負けないよ!」
その上、ばしん、と音を立てて金貨を一枚、作業台の上に置かれてしまう。
「そ、そんな……」
「さあ、とっとと籠に入れとくれ。この籠も魔道具でね、本当に便利なんだよ。これも、旦那が買ってくれた物でね」
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