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家出人捜索
「人を探しているんです。」
ある雨の日の午後、この探偵事務所に、憔悴しきった中年女性が訪れた。聞けばその失踪人は、中学生二年生の男子で、名は加藤雄太14歳。二週間前の朝に学校に行ったきり行方不明だと言うのだ。
「警察には連絡されたのですか?」
「ええ。でも、警察はあてになりません。家出人なんて珍しいものではないので、あまり本気で取り合ってくれないのです。」
ため息をつく母親は、加藤和子。
「息子さんの特徴を教えていただけますか?あと交友関係は?」
そう問うと、母親の表情はますます曇った。
「息子は、やせ型で身長は160㎝くらいです。交友関係はありません。」
「お友達は居ないと?」
「ええ、だから、警察の方にも、友人の家を渡り歩いているということはありませんか?と聞かれたけど、本当にあの子には友達が居ないのです。一人も。」
「そうですか。何か、息子さんの失踪に心当たりは?」
「いいえ、ありません。私達家族は喧嘩もありませんし、息子に煩くしたこともないのです。ただ・・・。」
「・・・ただ?」
母親は固く両手を組んで握りしめると、絞り出すように答えた。
「あの子、学校で苛めにあってたんです。」
「苛め、ですか?」
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