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「何てことだ。私の………私のせいだ」
雨の音でかき消すことができないほどの、何千もの兵士たちのうめき声。それが、私の立つ崖の下から聞こえてくる。彼らの命は、もってあと数時間といったところだろう。
「博士のせいじゃありません!」
悲痛な叫び声に振り返ると、そこには長年私の手伝いをしてくれている助手がいた。彼女は涙と雨でぐしゃぐしゃにした顔をさらに悔しさで歪めて、震えるほど拳を握りしめている。
「………………アイナ君」
「博士が禁じた研究を盗んで戦争に利用したのは軍の奴らじゃないですか!博士は悪くありません!現に今だって、毒素に冒された人を救おうと………こうして………ここまで」
「ああ。大急ぎで試作段階の飛行船まで借りて解毒薬を調合しながら軍の輩を追って来たさ。………だが、これでは手遅れだ」
「まだ彼らは生きています!手遅れなんかじゃ」
「もう遅いんだよ!」
アイナが怯えたような、驚いたような瞳でこちらを見ていたが、思わず溢れ出た感情を止める術を私は知らなかった。倒れた兵士たちで埋め尽くされた平原を指差し、一気にまくし立てる。
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