雨雲

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ズンッと腹に衝撃を受けて、私はそのまま後ろに尻餅をついた。「ぐぅぇっ」と喉から身体の空気が一気に吐き出される感覚が拭いきれずに、咳き込みを繰り返す。 「す…すみません博士!」 アワアワと握っていた拳を開いて膝をついたアイナは、謝りながらも私を助け起こすことはしなかった。 痛みの残る腹を押さえつつやっとのことで顔を上げると、そこには真っ赤に腫れた双眸があった。丸いそれらは、親友がいつも私にくれたアメ玉によく似ている気がした。 「やっぱり……やっぱり私は、助けられる命を見過ごせません」 耳障りなほどの雨音の中で、アイナの言葉は真っ直ぐに私に届いてきた。 「………どうすると言うんだ」 絞り出すように言う。 「行きます。私一人で」 口に入れられずとも甘いとわかるその瞳から、私は視線を逸らした。 無茶だ。そのぼやきがアイナに届いたかはわからない。 彼女には、私には見えない希望が微かにでも見えているのだろうか。 「だから、その間に博士はあの場にいる全員をまとめて救う方法を考えといてください」 「は?」 「では、飛行船お借りしますね」 勢いよく立ち上がったアイナを私は慌てて呼び止めた。 「ま、待ちたまえ!全員救えだって?」     
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