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 見れば見るほどパッケージは美しい。  いくら美しくても、アダルトグッズのパッケージをうっとりと眺め、感動する人間はいない。そんなものに力を入れるなよ、と思うとなぜだか腹が立った。 「強面だけど作るものがかわいらしいってのがおもしろいな」  失礼な強面デザイナーに尻を掴まれたという俺の愚痴に、岩崎はそんな感想を述べた。俺は新聞から顔を上げ、鏡の中の彼をじろりと睨む。 「……話聞いてたか?」 「どうせ名波が見下した態度取ったんだろ。今日は気をつけろよ」 「黙ってていいんだろ?」 「黙ってるつもりなら余計に顔に気をつけろ。おまえは顔が冷たいんだよ」  なら連れていくなと主張したい。仕事とはまったく関係ないのに、誰が好きでパーティになど顔を出すものか。  岩崎は高校時代の同級生で、現在は美容師と客という間柄だ。昔も今も特に親しくないのだが、店を移ったとか独立したとか髪を切りに来いとか葉書を送ってくるので、俺も引っ越しの度に葉書を送るうちに、気づけばそろそろ十年のつきあいになる。     
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